「元・合唱部員」というコンプレックス
私は高校生の頃に、合唱部に入っていました。
その合唱部は顧問の先生が熱心で、全国大会への出場もあり、有名でした。
そのため、
「○○高校の出身です、合唱部に入っていました」
というとたいてい、
「そうなの?じゃ歌がうまいんでしょう?歌って歌って!」
と例外なく言われたものです。
大学生の頃も、また卒業後に就職した会社でも、いつもそうでした。新人歓迎会などで、宴会のあと二次会でカラオケに引っ張っていかれ、「まず一曲!」と言われるのが常でした。
でも、カラオケで歌うのは、私にとっては苦手なことでした。
実は自分の声に、コンプレックスを持っていたのです。
確かに、合唱部にいたくらいですから歌は好きでした。ただ、合唱で歌うのと、カラオケで歌うのとでは、勝手が違うのです。合唱では、ハーモニーが重視されます。
まわりに溶け込む声が求められますから、一人だけ目立つ声ではだめなのです。
私の声は、顧問の先生に「合唱向き」と言われました。音程がしっかりしていて声が柔らかく、透明感がある、と。
そのときは、「ほめられた!」と、とても嬉しかったのですが…。
でも、元々あまり声量が大きくないこともあり、ソロをまかされることはほとんどありませんでした。同じ合唱部のメンバーでも、ハーモニー向きの声とソロ向きの声を使い分けられる人もいて、うらやましく思っていました。
そういう人はカラオケで一人で歌っても、とても上手です。
ですが私の場合は、一人で歌うと個性の乏しい歌になってしまうのが気になっていました。
きれいな声でなくっても、その人なりの味のある歌は聞いていて楽しいですよね。でも私の場合は、迫力にかけるというか、おとなしく、こじんまりと無難にまとまってしまうのです。
ですから、歌えと言われてカラオケで歌っても、中途半端というか地味な出来になって、期待はずれっぽいリアクションをされるのがイヤでした。
そんなわけで、それ以来カラオケで「歌え」と言われると、無理やり誰かをさそってデュエットにしてしまい、コーラスパートを歌ってごまかしています。コーラスパートならきれいにハモる自信はありますので、まわりの人も喜んでくれます。
でも本当は、ソロでも素敵に歌えたらなぁ、というのが素直な気持ちなのです。
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